怖い話を怖くない家で

 今住んでいる家は、築20年を軽く越える木造アパートなのに、全く家鳴りが起きない。
 二階に住む人がドタンバタンと大きな音を立てるのは日常茶飯事で、生活音は聞こえるが、聞きなれた「パン!」「ピキィー」という音はない。

 おまけに、どこにいても背後が気にならない。一人で留守番していても怖くない。

 これ、めちゃくちゃすごいことでっせ。

 と、ヤバイ実家に住んでいた私はものすごく嬉しい。
 実家は、正直、ヤバかった。
 私が20歳の頃建て替え、1/10くらいになり、ハナが来てからは一層平気にはなったが(そのハナも旅立ってしまったし)、未だに自室にいると、誰もいない二階を子供と思しき軽さのパタパタという足音が天井を走る。
 はっきり言って、そのくらいなんでもねえよ。というほど、建て替え前の実家はヤバかった。

 今は怖くない家に住んでいる。

 なので、怖い話の本も家で読める(昔は家で読めなかったので、図書館で耳袋などを読んでいた。あ、そうです。怖い話し系はすごく好きなんです。怖い思いを散々しても、好きなのよ)。

 
 『山怪 山人が語る不思議な話』(田中康弘・著)



 
山怪 山人が語る不思議な話
山と渓谷社
2015-06-06
田中康弘
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 フリーカメラマンの著者さんが、主にマタギさん達から聞いた山での「ちょっとおかしなこと」をまとめた本で、強いて怖くしている訳でもなく、淡々としている所が良い。それは「日常」の中で起きた、「ちょっと変わったこと」であるからだろう。
 著者さんは狩猟現場を取材するお仕事を長くされていて、マタギさん達にも多く知り合いがいて、ご本人も山にこもるらしい。

 どこどこの誰々が言っていた話し、として、山で起こったことを注釈をあまり加えず書かれており、なおかつご本人が山や山に住む人達を愛している感じが伝わってきて良い。

 興味深かったのは、北東北では狐の話が多く、「固有名詞を考えるのが面倒臭かったのか、すべて狐のせいで済まされる。食べ物をちょろまかす微罪から人の命を奪う重罪まで、何でもかんでも。(あとがきより」とあったこと。

 部落問題の本を読んでいたとき、被差別者達は動物の皮を加工したり動物の死穢に携わる仕事をしていることが多いが(ニワトリとタマゴの関係で、被差別者だったからそういう仕事を担わされた、という部分と、そういう仕事をしていたから差別された、という二重拘束に似た状態があった)、関東以北では部落差別が軽い。それはマタギなどの動物を狩猟する人達が尊敬され、普通におり、被差別者ではなかったせいだ、とあったのを思い出した。

 動物を殺して皮をはいだり油を取ったりすることを忌避する傾向が、東北などでは薄かったということ。らしい。

 なるほどなー、って思ったけど、著者のあとがきを読んで、加えて、北東北では「何でも狐のせいにする」という寛容さが差別問題を軽くしているのかもしれない。などと思った。
 むろん、差別問題は北東北にもそれなりにあって、辛い思いをした人はいただろうが、自然環境が厳しいせいだろうか、助け合う精神も、西日本よりも強いのかもしれない。

 むろん、単純に西日本の方が大陸から渡って来た人達が多かったことや、中央政権(この場合は奈良や京都)からすると、被差別者を作ることによる市井の安定への目論見があったのは間違いないと思うが。
 あ、でも、東北の方でもアイヌの人達と交易があったり、船で日本海側へ着いた大陸の人とかいそうだけどね?どうなんだろ。

 北海道ではアイヌの人達を差別することが多かったそうだけど、それはきっと開発で移り住んできた関東や関西の人間が差別したんじゃないかしらん。
 北海道に近い北東北では、案外すんなりと受け入れていたような気がする。

 弘前に帰ったとき、ねぷた館で昔のねぷた祭りの写真を見た時の事。
 若い衆の顔が、みな、めっちゃ濃かった(笑)。
 ウチの旦那さんも生粋の津軽っ子だが、顔が濃い。彫が深すぎる。どうにも、どこかにうっすらアイヌの血が入ってんじゃねえか?ってくらい、濃い(むろんT家はアイヌの人達と混ざってないらしい)。
 それを思うと、ものすごく前の代から少しずつ交流があって血が混ざっているのではないかと思う。
 ただ単に、縄文系の顔なだけかもしれないけど(それもありうる。私は生粋の弥生系の、顔が平たい族だ。どこからどう見ても農耕民族であり、旦那さんは狩猟民族の顔をしている)。

 山の話しに戻って。

 山ではどうやら狐火が飛んでいるらしい。
 私は山とは縁遠く、見たことがない。海も近いことは近いが、海で生活している訳ではなく、父は高知の海沿いに生まれ育ったからあっちは海派だけど、母系は平野で生きてきた人達だ。
 けれど、森は好きだし、山はちょっと怖い。

 狸はものを捕ったり、迷わせたりはないそうだが、「音」を出すそう。
 木を伐採する音や、呼ぶ声など。
 ホンドダヌキはものすごく可愛いのに、どうしてあの生き物がそんな山の怪を引き起こすと思われたのかしら。
 
 最後に、一番興味深かったのは、この単語。

 「オジロヨンパク」

 ネットで引いても出てこない。尾の先と、両手両足が白い猫(犬も含む?)で、縁起が悪いとされているそうな。
 民俗学とか昔の話しとか、ものすごく好きな自分がうずうずする。

 願わくば、山に棲む者たちが、これからも変わらず居続けてくれますように。
 相当難しい話しのようだけど、マタギさん達も伝統を引き継いで元気でいてくれますように。

 

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